2019年8月7日の東京株式市場は4営業日続落しました。
終値は前営業日比68円75銭(0.33%)安の2万0516円56銭でした。
貿易摩擦問題の激化懸念で米国市場が2019年最大の下げ幅を記録、
日本市場も大きく売りが先行してスタートしました。
下げ幅を600円に広げる場面もありましたが、
20,000円の節目まで視野に入ると、下げ止まり、
下げ幅を急速に縮小しながら取引を終えました。
リスクの顕在化が積み重なるこのタイミングで、
本日も最後までしっかりお読みください。
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【米国市場の動向】
米国市場は6営業日ぶりに反発しました。
ダウ工業株30種平均は6営業日ぶりに反発して、
前営業日比311ドル78セント(1.2%)高の2万6029ドル52セント、
ナスダック総合株価指数は7営業日ぶりに反発して
前営業日比107.225ポイント(1.4%)高の7833.265で取引を終えました。
前日は767ドルの大幅安で、自律反発の出やすいタイミングにあったことで、
200ドル以上の上昇でスタート、
小幅のマイナスまで進むなど不安定な動きが続いた後、
午後に入って上昇幅を伸ばしました。
中国の中央銀行にあたる人民銀行が人民元レートの対ドル基準値を
市場実勢より人民元高に設定して、
元安を抑制する姿勢を示したことが市場の不安心理を緩和しました。
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【日本市場の動向】
日本市場は不安定な動きにはなりましたが、
下げ渋りを見せる展開となりました。
中国の中央銀行が前日は市場実勢より人民元高に設定して
米国市場が上昇しましたが、
本日は前日よりも元安・ドル高水準に設定したことで
トランプ氏の逆鱗に触れるとの懸念が広がり
中国関連銘柄に売りが出ました。
午後に入ると日銀によるETF買いへの期待が市場を支え、
下げ幅を縮小させながら取引を終えました。
金属製品、繊維製品、非鉄金属や海運業など
素材・景気敏感銘柄が厳しく売られ、
陸運、不動産、倉庫、小売などの内需が上昇しました。
東証1部の売買代金は概算で2兆2396億円、
売買高は12億8307万株でした。
東証1部の値下がり銘柄数は1060、
値上がりは1003、変わらずは86でした。
日経の日足は下上ヒゲを持つ短陰線を形成しました。
実体は前日の日足に収まり、反発でありながら持ち合い、
下げ渋りが確認できたというところに意味がありそうな形です。
トレンドの強さを表すオシレーター系指標のRSIが
5/14以来のところまで下げてきたので、
売られ過ぎのサインも揃っています。
本日の高値を超えると短期の戻りを試す動きになりますが、
21,500円が早速抵抗に変わる可能性がある上、
13週、26週移動平均線も上を塞がっていることから、
力強く上昇に戻るのは難しく時間をかけて数回の抵抗を消化する必要がありそうです。
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【日本市場の総合分析: 今後の投資戦略】
週初の月曜日から「後1-2営業日でセーリングクライマックスがきます」と
解説してきましたが、本日の動きは下げ渋りの典型的なパターンを見せました。
小幅下げになりながら、TOPIXは上昇に転じ、
マザーズも上昇で引ける、これが下げ止まって戻りを試す動きが始まる
典型的な動きです。
とは言って、すぐ上昇すると安心するのは早いでしょう。
来週12日は山の日の振替休日で休場、
三連休を控えているため金曜日はまず動きづらく、
木曜日は実質的に来週からの動きを予想できる重要なポイントです。
明日も小幅でありながら本日の高値を超えて
上昇するか、下げない姿を見せることで市場の心理は少し落ち着くでしょう。
もちろんその反対の動きになった場合は
投資家の心理はなおさら悪化しかねます。
戦略は前日からの戦略が有効に働きそうなので変更せず、
「好決算にも関わらず市場の流れに乗って
売り込まれた銘柄に資金が向きやすいので、
短期的なトレードで狙ってみるのもよいでしょう。」
戦略はここまでにして、豆知識をひとつ。
人民元の基準値、元安誘導、など少し複雑な話しになって
一体なんのことですか?という質問がここ1-2日で増えてきたので
簡単に説明しておきます。
■■ ステップ1.中国の通貨政策(為替制度)の理解
中国は為替の変動を一定の範囲に制限する
「管理変動相場」と呼ばれる仕組みを採用しています。
変動相場という名前は付いていますが、
実質的に固定相場制の一つと考えて無理はないでしょう。
為替レートを市場メカニズムに任せる形を取ると表明しますが、
その国の政府・中央銀行が介入して為替レートを管理する制度をいいます。
■■ ステップ2. 基準値とはなに?
市場のメカニズムに価格の変動を任せる変動相場制とは異なり、
中国人民銀行(中央銀行)が毎日午前9時15分ごろに取引の目安となる
対ドル相場を発表します。これが「基準値」というものです。
基準値は民間の銀行が報告する為替レートなどをもとに
中国人民銀行が算出していますが、その算出方法の
詳細を公表されておらず、市場の実勢レートから乖離することが
多く見られます。
■■ ステップ3. 民間の銀行はどの範囲で取引できる?
銀行はこの基準値の上下2%以内の価格でしか元の売買ができません。
つまり、この基準値がどのレベルに設定されるかによって
為替の変動範囲が決まるわけです。
基準値を市場の実質レートより低く・高く設定することによって
元安・元高を誘導できるということです。
■■ ステップ4. どうして今の時点で突然問題になる?
実は突然ではありません。
米財務省は今年の5月28日に公表した半期為替報告書で、
中国の通貨政策に「深く失望した」とすでに表明しています。
この時点では制裁対象とする「為替操作国」への指定は見送りましたが、
6カ月かけて再検討すると結論づけており、
その検討結果が今回発表されただけです。
いかがでしょうか、少しはすっきりしましたか?
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【各市場の動き】
日経平均(円)
20,516.56 -68.75(-0.33%)
ドル・円
106.22 – 106.23 -0.15(-0.14%)
ユーロ・円
119.00 – 119.04 -0.29(-0.24%)
ユーロ・ドル
1.1203 – 1.1206 -0.0011(-0.09%)
NYダウ工業株30種(ドル)
26,029.52 +311.78(1.21%)
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