【世界市場の総合分析: 今後の投資戦略】
ジャクソンホール会議だけが生きている材料のように扱われていた先週、乱高下を繰り返した日経は結局+173.52(+0.55%)の拍子抜けするような小動きで終わりました。世界が注目していた材料を消化した翌週、週間の市場を展望します。
|| 米国市場は下落してから上昇で終わり
まず、ジャクソンホール会議の結果と米国市場の動きから。
ジャクソンホール会議で行われたパウエル議長の講演でポイントを要約すると、インフレの抑制はまだ続ける必要がある。そのためには追加の利上げなど金融の引き締めを続ける必要がある、ということです。
市場が恐れていた「タカ派的な発言」であることは間違いないため、講演内容が明らかになった後は米国市場が下げに転じました。しばらく下げた後は、「1000ドルを超える暴落を招いた昨年ほどの厳しい内容ではない」との解釈で市場は上昇に転じました。
結果、米国市場は上昇して一週間の取引を終えました。ダウ工業株30種平均は反発して、前営業日比247ドル48セント(0.7%)高の3万4346ドル90セント、ナスダック総合株価指数は反発して、前営業日比126.674ポイント(0.9%)高の1万3590.646、S&P500種株価指数も反発して前日比+29.40(0.67%)の4,405.71で取引を終えました。
|| 市場の注目は”データ”
ジャクソンホールの結果を受けて米国市場の上昇を背景に日本市場は上昇してスタートする可能性が高まりました。チェックポイントはこの上昇が継続するかですが、答えは「一進一退」の動きが予想されるということです。
分析の起点は米国市場の動きを予想すること。その米国市場ですが、パウエル議長の講演内容に大事なヒントが隠れています。「追加利上げの有無はデータ次第」と、従来方針を繰り返したので、長期金利の動向及び雇用関連の指標が鍵を握ります。
8月末か9月初日に渡るこの週はまさしく雇用関連の指標発表予定が密集する雇用統計まつりの週。
・8月29日:7月の米雇用動態調査(JOLTS)
・8月30日:8月のADP全米雇用リポート
・8月31日:7月の米個人消費支出
・9月1日:8月の米雇用統計、8月の米ISM製造業景況感指数
週半ばのADP全米雇用リポートと後半の米雇用統計は週の真ん中と最後に荒れる地合いを用意しており、その前は様子見になりやすいので、ニュース一つ一つ敏感に反応する相場が予想されます。
米国市場のみならず、日本市場も同様の動きとなるでしょう。日本も雇用関連のデータ発表が週前半に予定されています。8月29日に7月の有効求人倍率、
7月の完全失業率が発表され、市場への影響は限定的とはいえ、米国のデータと組み合わせて分析したいとのニーズで一方的に動きにくい地合いになるでしょう。
|| 懸念していた半導体関連銘柄の動き
先週の話題はハイテク関連が占めています。世界の注目を集めていたエヌビディアの決算は市場の予想を大きく上回ったにも関わらず、市場全体の上昇を牽引するには失敗。日本市場の半導体関連は期待をかけていましたが、金曜日に大きく反落して終わりました。
もう一つの注目点は自動運転関連。8月前半では米カリフォルニア州当局がWaymo社(アルファベット傘下)とGM Cruise社(GM傘下)に対して、サンフランシスコ市内での完全無人タクシーの24時間営業を認めるというもの。
未来がぐんと近づいてきたような感覚を味わえるニュースですが、市場では早速日本でも関連銘柄への注目が集まっています。市場が荒れやすい地合いではこのような「今が旬のテーマ」に注目が集まりやすいので、関連銘柄に注目するのはいい戦略でしょう。
また、自動運転関連は一過性のテーマではなく、これからもレベル5が実現するまで続くテーマなので、長い目でトレースしていくのも良いでしょう。例えば、「自動運転関連」で真っ先に浮かぶ銘柄はLiDARを手掛けるソニー(6758)。10月3日以降、安値を切り上げながら上昇トレンドが続いてきましたが、6月以降は下げトレンドに変わっています。
ソニーの週足
これがテクニカル的な難点ですが、週足でみると、むしろ安値を切り上げる中・長期的な上昇基調。長い目で投資するなら今からでも考慮に入れて良い銘柄でしょう。
|| その他、日米国長期金利、為替の動きに注目