国債買い入れの減額で円安が加速とは
政府の介入により151円付近まで円高が進んだ為替市場が2024年6月末(正確には6月26日)に再び160円台に下落しました。それを伝える日経の記事にはこのような解説があります。
日銀が6月14日の金融政策決定会合で国債買い入れの減額開始を見送り、緩和的な金融環境が続くと見込んだ円売り・ドル買いも円相場を押し下げる状態が続いている。
要するに国債買い入れの減額開始を見送ることによって円安が進行した側面もあるということですが、国債買い入れの減額と為替がどう関係するか、お分かりでしょうか?難しいですね。誰かに説明してといわれると説明どころかまともに理解することもできない。そう思う人は多いのではないでしょうか?そこで世界一やさしく説明するジョンが、わかりやすく解説します。
一気にこの意味を理解するのは難しいので、2段階に分けて一つずつ理解していきましょう。
国債買い入れの減額と債券価格の関係
為替との関係を理解する前に国債買い入れの減額が債券価格に与える影響を理解する必要があります。ここが抜けているので、円高だの円安だの言われてもわからないわけです。
国債買い入れの減額が実施されると起きること
まず、日本銀行(BOJ)が国債買い入れの減額を発表すると、以下のような影響が債券市場に現れます。
🔴 債券価格への影響
- 需要の低下:
- 日本銀行が国債の買い入れを減額すると、市場での国債の需要が減少します。中央銀行が主要な買い手である場合、この需要の減少は直接的に債券価格の低下を招くことになります。
- 価格の低下:
- 債券の需要が減少すると、債券の価格は下落します。これは経済学の基礎をなしている需要と供給という市場原理によるもので、需要が減ると価格が下がるということを意味します。
債券の需要が減って価格が低下するのはわかりました。これが金利に与える影響を考えるのが次のステップです。
🔴 金利への影響
- 債券利回りの上昇:
- 債券の価格が下がると、逆に債券の利回り(これをイールドと呼びます)は上昇します。利回りとは、債券の価格に対するクーポン(利息)支払いの割合を示します。例えば、額面金額100円で、利息5%で発行された債券があるとします。この場合の利回りはもちろん5%です。では、同じ債券の価格が90円に下がると利回りはどうなるでしょうか?利息は額面100円に対する5%で5円、これは変わりません。反面、価格は90円に下がったので、利回りは5円/90円=5.56%に上昇します。
- この部分は難しいので以前このブログで紹介した債券と金利編を参考にするとわかりやすいです。
これで利回りへの影響まで明確になりましたね。いよいよ次のステップ、為替市場への影響について考える時間です。
国債買い入れの減額と為替市場の関係
🔴 為替市場への影響
日本銀行の国債買い入れ減額によって債券の利回りが上昇するところまでは理解できました。それではこれが為替市場にはどんな影響を与えるのでしょうか?
- 金利差の縮小:
- 国債買い入れの減額によって日本の金利が上昇する場合、日米金利差など他国との金利差が縮小することになります(これは他国の金利が動かないという前提が必要です)。日本の金利が相対的に高くなると、円の魅力が増し、円高圧力がかかります。金利が1%と5%の国があると資金はどこに集まるでしょうか?
- 投資家の行動:円買いの拡大
- 金利上昇により日本の資産がより魅力的になると、海外投資家が円建て資産を購入するために円を買う傾向が強まります。これは円高につながることになります。
- まとめ:国債買い入れの減額は円高につながる
- ここまでのステップで国債買い入れの減額は債券利回りの上昇を通じて円の魅力を高めることが理解できました。円の魅力が高まるので、自国の通貨を売って円を買う動きが加速します。これは当然「円高」につながります。
ニュースに戻って、結論
日本銀行の国債買い入れ減額は、債券市場では債券価格の低下と利回りの上昇をもたらします。また、為替市場では円高圧力を強める可能性があります。ここまではいいですね?
しかし、記事ではこのようになっています。
“国債買い入れの減額開始を見送り”
ここまで説明してきたことの反対のことをしていますね。円高につながりやすい減額開始を「見送った」、従って円安につながるわけです。
ここまでの説明が理解できたところで、記事をもう一度読んでみてください。
日銀が6月14日の金融政策決定会合で国債買い入れの減額開始を見送り、緩和的な金融環境が続くと見込んだ円売り・ドル買いも円相場を押し下げる状態が続いている。
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