【今週の焦点】
今週の東京市場は3日(月)から7日(金)までの5営業日で、祝日による休場はありません。前週(7月27~31日)の日経平均株価は週間で249円13銭(0.39%)安の6万4362円02銭と2週ぶりに小反落しましたが、週の中身は数字以上に荒いものでした。28日はオランダのASMLホールディングが独占してきた深紫外線露光装置の製造に中国企業が参入したと報じられ、AI・半導体関連株が全面安となって前日比2566円27銭(3.95%)安。29日も続落して一時6万448円90銭まで沈み、7月中旬からの下げ幅は6000円近くに達しました。
流れを変えたのは米国時間29日の取引終了後に発表されたマイクロソフトの決算です。AI向け設備投資が現金を食い潰すという懸念が後退して同社株は15%を超える上昇となり、SOX指数は8%高。この流れを引き継いだ31日の東京市場は前日比2494円59銭(4.03%)高と急反発しました。ただし東証プライムの値上がり銘柄は612にとどまり、値下がりは922です。アドバンテスト1銘柄で前引け時点の指数寄与は約1142円に達しており、上げたのは指数であって市場全体ではありません。
金融政策と為替も大きく動きました。31日の日銀金融政策決定会合は政策金利を1.00%に据え置いた一方、植田和男総裁は会見で、金融環境が緩和的すぎると判断すれば利上げペースを加速することもありうると踏み込んでいます。その前夜、30日深夜には163円手前から157円90銭まで約6円の急落があり、日本当局による円買い介入とみられています。韓国も同じ日にドル売りウォン買い介入を実施したと明らかにし、深夜にはニューヨーク連銀のレートチェックも報じられました。
今週の材料は、週の入り口と出口の両端に固まっています。3日(月)は為替介入の2発目が最も警戒される日で、同じ日に財務省が4~6月の介入実績を日次ベースで公表し、夜には米7月ISM製造業景況指数が出ます。そして6日(木)の取引終了後にソフトバンクグループとレーザーテックの決算が並び、その反応が出る7日(金)の夜に米7月雇用統計が控えます。日経平均への寄与度が突出した銘柄の決算と、9月の米利上げ観測を左右する雇用統計が24時間のうちに連続する形であり、今週のボラティリティは7日(金)にピークを迎えます。週前半は介入警戒で為替が振れる一方、株の方向は決まりにくい。この前提で1週間を組み立てます。
【日本株:戻りの本物度を試す1週間、想定レンジは6万2000~6万7000円】
今週の日経平均株価の想定レンジは6万2000~6万7000円とみます。上限は週足で上値抵抗になっている13週移動平均線6万6032円を終値で上抜けた先、7月22日の戻り高値6万7592円の手前です。下限は26週移動平均線6万1124円の上に位置する節目で、前週の急落局面でも終値ではこの線を割り込まずに耐えました。週足は約4000円の長い下ヒゲを引いており、短期的な値幅調整はいったん終わったとみています。
焦点は、31日の急反発が数銘柄の買い戻しで終わるか、裾野が広がるかです。判定は値上がり銘柄数で行います。プライムの値上がりが1000を超え、33業種のうち上昇が20業種を超えてくるようなら7月下旬の下げに対する本格的な戻りとみて構いません。逆に半導体だけが買われる形が続くなら、アドバンテストが一日反落するだけで日経平均は1000円単位で下げます。まずは終値で6万5000円を回復し、そこに定着できるかを確認する週です。
個別では6日(木)が最大の山場です。ソフトバンクグループは日経平均への寄与度が最上位に位置し、レーザーテックも半導体製造装置の需要見通しを映す銘柄です。両社とも取引終了後の発表となるため、値動きが出るのは7日(金)になります。ほかに4日(火)のトヨタ自動車とイビデン、5日(水)の太陽誘電とスズキ、6日(木)の古河電気工業、7日(金)のフジクラが続きます。
もう一つの変化は為替です。ドル円が6円下げたことで、輸出企業が期初に置いた想定為替レートとの距離が一気に縮まりました。4日のトヨタ自動車をはじめ、この局面で通期計画の前提レートをどう置き直すかが決算の見どころになります。円高が続けば、これまで買われてきた輸出関連から内需・ディフェンシブへ資金が移りやすくなります。
【米国株:雇用統計待ちで上値を試す、NYダウは5万1500~5万3500ドル】
米国株はNYダウで5万1500~5万3500ドルのレンジを想定します。前週末31日のNYダウは前日比276ドル97セント高の5万2485ドル03セント、ナスダック総合指数は251.676ポイント高の2万5373.853で引けました。アマゾン・ドット・コムの4~6月期決算が売上高と営業利益の両方で市場予想を上回り、AI投資に積極的なアルファベットとマイクロソフトにも買いが波及しています。ただしナスダックは月間では2カ月連続の下落で、7月に生じた傷が完全に癒えたわけではありません。上限の5万3500ドルは7月の高値圏を抜けた先の節目、下限の5万1500ドルは7月下旬に何度も下値を固めた5万1900ドル台を割り込んだ水準です。
金融政策は7月28~29日のFOMCで政策金利が3.50~3.75%に据え置かれ、これで5会合連続の据え置きとなりました。採決は9対3で、3人の地区連銀総裁が0.25%の利上げを主張しています。FRB議長は会見でインフレ抑制への決意を示す一方、具体的な行動時期には踏み込みませんでした。市場ではFedWatchベースで9月会合の0.25%利上げ織り込みが7割弱まで高まっており、今週の指標はこの観測を確かめる材料になります。
日程は3日のISM製造業景況指数、5日のADP雇用統計とISM非製造業景況指数、そして7日の雇用統計です。前回6月分の非農業部門雇用者数は5万7000人と予想を大幅に下回り、4月・5月分も下方修正されました。ワールドカップ需要が春先を押し上げた反動との見方もあり、大会後の7月分がどう出るかで9月利上げの確度が決まります。企業決算では4日のアドバンスト・マイクロ・デバイセズが重要です。マイクロソフト1社で始まった半導体の買い戻しが、AI向け半導体の受注見通しで裏付けられるかどうかがここで分かります。
【為替:介入後の綱引き、ドル円は156~162円】
ドル円は156~162円のレンジを想定します。上限の162円は、介入前に付けた163円台の手前で戻り売りが出やすい水準です。下限の156円は7月30日の安値157円90銭を割り込んだ先で、2発目の介入が入った場合に到達しうる水準としています。介入後は157円90銭からいったん161円手前まで戻し、その後再び158円台半ばへ押し戻される展開になっており、当局と円売り勢の綱引きが続いています。
最大の警戒材料は2発目の介入です。過去のケースでは単発で終わらず数日内に2度目が入ることが多く、IMFの集計ルール上は3営業日以内の介入が1回とカウントされるため、3日(月)までが同じ枠に入ります。半年に3回という制約のなかで枠を単発で終えるかという論点もあり、週明けは為替が最も動きやすい日になります。同じ3日には財務省が4~6月期の介入実績を日次ベースで公表します。
円買い方向を後押しする材料も増えました。日銀総裁が利上げペースの加速に言及したこと、韓国との協調的な動きに加えて米財務長官が円は著しく過小評価されていると述べたことは、円安是正への各国の姿勢を示すものです。一方で7日の米雇用統計が堅調な結果となれば9月利上げ観測が強まり、ドル買いが再び優勢になります。週末に向けて方向が決まる展開です。
【長期金利:日銀の加速示唆で上値を試す、新発10年債は2.72~2.88%】
国内の長期金利(新発10年物国債利回り)は2.72~2.88%での推移を想定します。7月30日時点の水準は2.795%で、7月9日に付けた2.875%が7月の高値、15日の2.685%が安値です。上限の2.88%はこの7月高値を上抜けた先、下限の2.72%は7月中旬の低い水準に戻る場合の目安にあたります。
上昇方向の圧力が優勢とみています。政策金利は据え置かれたものの、日銀総裁が利上げペースの加速に含みを持たせたことで、次回以降の利上げを織り込む動きが出やすくなりました。5日(水)には6月会合の議事要旨が公表され、政策委員の間でどこまで議論が進んでいたかが確認できます。原油高を起点としたインフレ懸念と拡張的な財政運営への警戒も引き続き残ります。ただし円買い介入で円安が一服したことは輸入インフレの圧力を弱める方向に働くため、一方的な金利上昇にはなりにくい局面です。
【原油・金:原油は高値圏を維持、金は最高値圏で堅調】
原油相場は高値圏でのもみ合いが予想されます。WTI先物は31日に1バレル85ドル近辺まで上昇し、7月の月間上昇率は20%を超えて3月以来の大きさとなりました。ホルムズ海峡でタンカーが引き返しを余儀なくされたとの報道や、紅海での攻撃を背景とした供給不安が価格を押し上げています。一方でトランプ大統領は7月30日、パレスチナ自治区ガザの暫定統治を監督する平和評議会がハマスの完全な武装解除で合意したと発表しました。当事者からの正式発表はないものの、中東の緊張緩和が確認されれば原油は下押しし、株式市場には安心材料となります。
金相場は堅調です。31日のNY金先物12月限は前日比63ドル60セント高の1トロイオンス4160ドル60セントで引けました。ドル指数の下落が買いを誘っています。今週は7日の米雇用統計が分岐点で、労働市場の堅調さが確認されて9月利上げ観測が強まれば金利を生まない金には逆風、逆に弱い結果ならドル安と実質金利低下の両面から買われやすくなります。
【今週の主なスケジュール】
8月3日(月):財務省の4~6月期為替介入実績(日次ベース)公表、中7月製造業PMI、米7月ISM製造業景況指数、国内決算(伊藤忠商事、ヤマトホールディングス)
8月4日(火):米6月貿易収支、米6月雇用動態調査(JOLTS)求人件数、国内決算(トヨタ自動車、イビデン、川崎汽船)、米決算(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、キャタピラー、マクドナルド、メルク)
8月5日(水):6月毎月勤労統計(現金給与総額)、日銀6月会合議事要旨、中7月サービス業PMI、米7月ADP雇用統計、米7月ISM非製造業景況指数、国内決算(太陽誘電、スズキ、日本郵船)、米決算(ウォルト・ディズニー、サンディスク)
8月6日(木):国内決算(ソフトバンクグループ、レーザーテック、古河電気工業)、米新規失業保険申請件数、米7月チャレンジャー人員削減数
8月7日(金):6月家計調査、国内決算(フジクラ、東洋エンジニアリング)、米7月雇用統計
【今週の投資戦略】
1つ目は、6日(木)のソフトバンクグループとレーザーテックを決算跨ぎで持たないことです。ソフトバンクグループは31日に一時15%高のストップ高まで買われており、決算前の株価にはすでに期待が乗っています。保有しているなら6日の取引時間中に一部を落とし、買うのなら7日(金)の反応を見てからにします。日経平均への寄与度が最上位の銘柄なので、この判断は指数のポジションにもそのまま当てはまります。
2つ目は、輸出関連と内需の比重を入れ替える準備です。ドル円が6円下げた以上、輸出企業の想定為替レートとの距離は先週までとまったく違います。4日(火)のトヨタ自動車の決算で会社側が通期の前提レートをどう置き直すかを確認し、円高が定着する前提なら電力・鉄道・小売といった内需に資金を寄せます。判断材料が出るのが週の前半なので、ここは動ける週です。
3つ目は、3日(月)を為替の日として扱うことです。介入2発目の警戒が最も高い日であり、ドル建て資産や外貨建て投信を持っているなら、この日をヘッジ比率の点検日に充ててください。株式のポジションを増やす日ではありません。
4つ目は、7日(金)の米雇用統計をまたぐ建玉を軽くすることです。同じ日の東京市場は前夜のソフトバンクグループとレーザーテックの決算に反応し、その夜に雇用統計が出ます。1日のうちに国内の指数材料と米金利の材料が重なるのは今週この日だけで、値幅が最も出やすい場面です。
全体としては、通常の半分程度のポジションで週に入り、6日の決算と7日の雇用統計を確認してから資金を投じるのが今週の基本姿勢です。31日の急反発は限られた銘柄が作ったもので、市場全体が戻ったわけではありません。値上がり銘柄数と上昇業種数という2つの数字で裾野の広がりを確かめてから、買い上がるかどうかを決めます。
(本記事は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断はご自身の責任でお願いいたします。)
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