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債券と株価の関係~債権と金利の関係シリーズ3~

前回は債券(国債)と金利をみてきました。では、金利だけ気にしていればよいのでしょうか。債券に影響を及ぼすものは、決して金利だけではありません。債券シリーズ3では債券と株価、為替の関係を説明します。

債券と株式の違い

債券と株式、いずれも資金を調達するために発行されるもの、という点では同じでした。ではいったい何が違うのか、最初に債券と株式の違いから見ていきましょう。大きい違いは3つです。

  • 経営にかかわる権利の有無
  • 還元策の違い
  • 元本保証の有無

債券はあくまでも資金の貸し手であり、国や企業の経営にかかわる権利は発生しません。株式は株を購入することで「株主」となり、取得数によって経営に関して意見を言うことが可能です。発行された株式数の過半数以上を買うとその会社の経営までできてしまいます。
また、債券は決められた利息を得ることができますが、株式は配当や優待となり約束されたものではありません。そして、債券はよっぽどのことがない限り、償還時には元本(額面金額)が戻ってきます。それに対して株式は元本が戻る保証はありません。

債券と株式の違いについて、債券シリーズ1「債権とは」でお話しているので、詳しくはせひそちらを読んでみてくださいね。

債券と株式の関係

では、実際に債券と株式はどのように影響しているのしょうか。債券に関係する利回りや金利とも関わってくるので、順をおって説明していきます。

1.1 債券価格と利回りの関係

債券には投資元本と額面価格がありました。投資元本は実際の購入価格となり、額面価格は償還日に返却される金額です。投資元本(購入価格)は常に変動していて、必ずしも投資元本(購入価格)=額面価格にはなりませんでしたね。
そして、利回りは投資に対する利益の割合で、一定期間当たりの平均で示したもの。1年間の利回りを指すことが一般的で、利益には利息や売却損益が含まれます。簡単に言えば、投資のパフォーマンスを測定するための指標です。

上記内容を踏まえて、まずは債券価格と利回りの関係を見ていきましょう。

<図1>債券価格と利回りの関係

額面価格(返金される金額)が100万、償還期限1年、利率2%の債券が販売されています。

まずはBを見てみましょう。こちらは額面100万円の債券を同じ金額100万で購入した場合です。つまり返金される額と購入金額が同じで、そこに差益はありません。利率2%と決まっているので、利回りは2.00%となりますね。これはなんの問題もなく理解できると思います。

債券の価格は常に変動しています。次は購入価格が上がる、下がるなど、変動したときを見てましょう。
まずはAです。債券価格が額面価格より1万円上がった場合で、額面100万円の債券を101万で購入しました。額面金額は100万なので差益がマイナス1万となってしまいます。利息の利益が2万円なので、1年間での収益は1万となります。利回りは0.99%です。

次はCです。債券価格が額面価格より1万円下がった場合になります。99万で購入したので、差益はプラス1万となります。利息の利益と合わせて、1年間の収益が3万となります。利回りは3.03%です。

債券価格と利回りの関係は、
債券価格が上がると利回りは下がる
債券価格が下がると利回りは上がる
となりますね。そして言うまでもなく、利回りが大きい債券に投資したいと思う人が多いはずです。

1.2 債券価格と株価の関係

債券価格と利回りの関係が分かったので、ここに株価も合わせてみていきましょう。ここからが本番ですよ。

<図2>債券と株式の需要

債券価格が上がり、利回りが下がる場合
債券(特に国債)は安全資産ですが、利回りが低いならば正直あまり投資する魅力はありませんよね。(銀行へ預けるよりはよいかもしれませんが…)そうなると経済情勢にもよりますが、リスクをとって株式に投資し、より高い利益を得たいと思う人が多いはずです。そのため株式市場へ資金が集まり、株価は上がっていきます。

債券価格が下がり、利回りが上がる場合
利回りが高いなら、わざわざリスクが高い株式へ投資をせず、安全資産の債券へ投資する人が増えるはずですよね。株式市場から債券市場へお金が集まるようになるため、株価はさがっていきます。

関係性をまとめると図3のようになります。

<図3>債券価格・利回り・株価の関係

2.1 金利と株価の関係

債券と株価の関係には金利も関係しています。そのため、まずは金利と株価がどう関係しているのか解説します。

初めに金利と景気がどう関係しているのか、経済のサイクルを確認しましょう。
基本的に、景気がよくなると金利は上がります。すごく簡単な例で説明しますので、しっかりついてきてみてくださいね。

景気が金利を動かすメカニズム
景気がよくなり家計に波及してきたと仮定しましょう。個人の収入が増え、いろいろなモノ・サービスを買うようになります。そうなると金利が高くてもおカネを借りて、企業は設備投資したり新しい経営に乗り出したりしていきますね。

ただし、買う人が増えると物価の上昇にもつながっていきます。物価がどんどんあがり続けるとインフレが進む。それを止めるために、中央銀行が登場してきます。 中央銀行(日本は日銀)は利上げをして、物価上昇を抑えようとします。中央銀行の金利はいろんな金利と連動しているので、住宅ローンとか企業の借入金利も上がりやすくなります。

金利が上がりすぎると、今度は逆に景気が悪くなっていきます。
金利が高くなると、おカネを借りて設備投資や新しいことを始めるのは難しい、という企業が出てきます。個人でも住宅ローンで金利が上がると家を買うのをあきらめるかもしれませんよね。そうすると、経済活動は鈍り、景気は悪くなります。 そして、景気回復のために今度は金利を下げていくのです。これが中央銀行の利下げですね。 

このように経済は、好景気、不景気を繰り返し、金利の変動を伴って成長していきます。

<図4>経済のサイクル

2.1 金利と株価、債券の関係

次に、株価と債券がどう関係してくるのか見ていきましょう。

景気が良いときは企業活動も活発になり、売上や利益が増え、配当も増加が見込まれていきます。成長していきそうだと思える企業が増えると、企業へ投資したい!(投資して利益を得たい)と思う人が増えてきます。そのため、投資家の資金は株式市場に集まる。つまり、株式を買いたい人が増え、株価が上昇していくことになります。債券市場はというと、魅力をあまり感じないため価格は下がってきます。
(図5株価の上昇・債権価格の下落)

<図5>株価の上昇・債権価格の下落

逆に景気が悪くなったときはどうでしょうか。企業は設備投資や新しい研究開発を抑えていますし、業績が悪化することも考えられます。業績悪化は売上や利益、配当の減少につながり、経営状況自体が危なくなる可能性もあります。そんな危ない状況で、企業へ投資したい!と意欲的な人はいませんね。これからどうなっていくか分からない企業へ投資するのはリスクとも言えます。投資家は株式市場から離れていき、株価は下落していきます。資金はどこへ向かうのか、安全資産と言われる債券へシフトするようになります。
(図6株価の下落・債権価格の上昇)

<図6>株価の下落・債権価格の上昇

金利、株価、国債価格まで関係を見てきましたが、まとめると図7のようになります。

<図7>債券価格・金利・株価の関係

ここまで基本的な理論を説明してきましたが、実際のチャートを見てみましょう。

<図8>FFレートとダウ平均株価

チャートはアメリカのFFレート(Federal Funds Rate)とダウ平均株価です。
FFレートは政策金利(短期金利)の代表例です。アメリカは2022年3月から利上げを始めました。利上げは政策金利を上げることなので、FFレートも上昇しています。そして同じころのダウ平均株価を見ると、下落しています。

あれ、理論的には金利があがっているなら株価も上昇するんじゃないの?と思いますよね。

これは、株価が先行して動いていた、ということになります。どういうこと?となりますので、説明していきますね。

アメリカは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年3月よりゼロ金利政策を導入し、政策金利をほぼ0%にしました。そうすることで企業の設備投資をしやすく、個人はローンなどしやすくして購買力を高める、など景気回復を促しました。
その成果、アメリカ経済は回復していきましたが物価の上昇(インフレ)も起きていきました。インフレが起こると中央銀行が近々利上げを始めるはずだ…と多くの投資家は思い始めます。その心理が働き、どんどん株価は上昇してきます。この状況が、株価は先行して動いている、ということになります。
株価は過熱していき、実際に利上げを始めるとなったときには、すでに利益がのっている状態です。ひとまず利益を確定しておこうと思う投資家が増え、株価の下降につながります。

中央銀行が利上げをする目的は、金利上昇によって景気を抑制することです。それでも経済が強ければ株式は上がっていきます。(金利上昇・株価上昇)
逆に高い金利に耐えられない弱い経済ならば、おカネは株式から離れていきます。そのため株価が上がらず、場合によっては株安になっていくこともあります。(金利上昇・株価下降)

また、経済の強さ・弱さだけではなく、金利上昇のスピードなども関係しています。少しずつブレーキを踏むのと、急ブレーキでは、衝撃が違いますよね。この1年半くらいの株価はどちらかというと株安傾向にみえますが、金利上昇のスピードがとても速いことを考えると、アメリカ経済は決して弱くはないと言えるのではないでしょうか。

債券と為替との関係

債券と株価の関係をみてきましたが、債券は為替とも関係しています。最後に、国債と為替の関係を見てみていきましょう。ここでも金利が影響してきますので、まずは金利と為替の関係を確認します。

先週、1ドル150円を突破しました。(2023年10月3日)その後147円まで円高になって政府が介入した、していない、などニュースでは話題になっていましたね。約1年ぶりの円安水準になりましたが、そもそもなぜ円安になっているのでしょうか。 ひとつにアメリカと日本の金利差が挙げられます。今アメリカでは中央銀行(FRB)が利上げを行い、金利が約5%まで上がっています。日本は低金利の状態ですし、米国債を買おうと思う人が多く出てきますね。 日本の投資家が米国債を買うときは、一度円を売って米ドルに交換する必要があります。 多くの円が売られ、米ドルが買われると「円安・ドル高」となるわけです。つまり、金利の高い国の通貨は高くなりがちになる、ということです。

では、本題です。円安になると国債価格はどうなるのでしょうか。
結論から言うと、円安になると債券価格は下落します。

<図9>円安からの流れ

円安になるとどのような状況になるか、考えてみます。
図9①のように、円安になると輸出価格が上昇し輸出が増えていき、景気が上昇していきます。景気が上昇していくと、金利も高くなりやすいですね。
また図9②は、円安なので輸入する物の価格は高くなります。そうなると国内に流通する物価が上昇していきますね。そうなるとやっぱり金利も上昇しやすくなります。
ここで金利と債券価格の関係を思い出してみてください。逆相関の関係でした。(詳しくは債券シリーズ2「債権と金利の関係」を読んでみてくださいね。)金利が上昇すると、債券価格は下落します。つまり、円安になると金利は上昇するため債券価格は下がることになります。

※円安のときの場合で説明しましたが、円高では逆の動きになります。

債券価格と為替の関係をまとめると図10のようになります。

<図10>債券価格・金利・為替の関係

おわりに

いかがでしたでしょうか。債券には金利が深く結びついて、そこから株価や為替にも関係しています。それが難しく感じる要因の1つと言えそうです。
ただ、経済はそんな単純ではないですし、最近まで当たり前だと思っていたことがひっくり返ることもあるかもしれない。だから難しいのですが、それが面白い!と言えるようになりたいですね。
債券シリーズは今回で終了となります。読んでいただき、ありがとうございました。

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